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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義

 …彼は動揺しているのだろうか。

「…ね?そういうことなんでしょう?」

「これは参りました……鋭い考察ですね、レベッカ」

 その通り

 怪盗が彼等を狙う理由は、贅沢な暮らしに明け暮れる貴族や商人たちへの復讐だ。

 貧しい生活を強いられている人々を省みない、傲慢な彼等たちへの警告──。





「──なんて、言うとでも思いましたか」


「──…え」


「……フッ、ちょっと、失礼…っ」


「……!」


 なんと、口許を隠して顔をそらしたクロードは、肩を震わして笑い出してしまった。


「……//」

「……ククッ」

「なっ…何がそんなに面白いの…!?そんなに笑うことないでしょう…っ」

「……っ」

「失礼です!なら本当の目的を教えてくださればいいでしょう!?」

 自信満々に言ってしまったぶん、こんな反応で返されたら いたたまれなさが測(ハカ)り知れない。

 今すぐ逃げ出したいほど恥ずかしいレベッカは、顔を沸騰させて彼を問い詰めた。

「ふふっ……ハァ、……何故あなたは……それほど理由にこだわるのですか?」

 クロードは彼女から顔をそらしたままそう呟(ツブ)めく。

「財力のある者が他人から物を盗む…それが、それほど不自然なことなのですか?」

 だからレベッカ

 あなたは理由に拘るのか

「──残念なことに、あなたの話すような複雑な理由はありません」

「ならどうして…」

「…そうですね。あなたは鬼ごっこをした経験はございますか?」

「おにごっこ?」

「でしたら、隠れんぼは?」

「あ…、それなら昨日カミルという子としました」

 レベッカは首をかしげた。

 え?それがどう関係するの?

 ピンときていない彼女に、クロードは説明を付け足す。

「──ですから、私は隠れんぼが好きなのですよ。……レベッカ」

「???」

「つまり彼等の館に忍び込み、その目を欺いて宝石を頂き立ち去る──私にとっては隠れんぼと同じゲームのようなものです」

「ゲームですって…?」

 クロードにとって怪盗とは、ゲームを楽しむための仮の姿。

 どうせゲームをするのなら、より難しく…スリルある方が楽しめる。だから狙うのは貴族の館。財ある者の住処なのだ。


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