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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義

 部屋の中に通されて席についたカミル。

『 …すご 』

 この館はクロードにとっては滞在に使う別荘でしかないために、必要最低限の部屋しかない。

 それでもカミルにとっては信じられないような豪邸だ。

 レオが彼に運んできたホットミルクからあがる湯気をしげしげと見つめていた時──

 客間の扉が開き、クロードが部屋に入ってきた。

『 ……っ 』

 クロードの姿を見たカミルはその雰囲気に圧倒され緊張し、思わず背筋を正す。

『 …名前は? 』

『 カミル 』

 カミルの隣の椅子を引き、彼はそこに腰掛けた。

 クロードはレオに席をはずさせた。そして彼が部屋から出たところで、カミルに話しかけた。

『 あの男は私の従者で、医者でもある 』

『 え…っ、それじゃあ…! 』

『 今からカミル、お前の父上のところに彼を遣わせましょう 』

『 ホントに!? 』

 カミルの顔が輝く

──シッ

 大声で礼を言おうとした彼の口を、クロードの人差し指が制した。

『 ──ただし 』

『 …? 』

『 ただというわけにはいかない 』

『!!』

『 …当然だろう? 』

 カミルは難しい顔をする。

 もとはと言えば、その金がないからクロードを頼ってここに来たのだ。

『 でも僕……お金がないんだ 』

『 わかっている。必要な額は…今から私と共に、自分で調達してもらいます 』

『 自分で?ってどうやって…?』

『 ──私の言う通りにすればいい 』

 信頼できるかもわからない者に、安易にすがるな

 自分の力で必要なものを手に入れるのです

『 父上を救いたいのでしょう? 』

『 …うん 』

『 ──いい子だ 』

 早く飲まないと冷めてしまう

 クロードは目の前に置かれたホットミルクを飲むように、カミルの頭を撫でて催促した。






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