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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義
「どうかしたの?」
「…困りました」
彼はホールの様子を、顔を動かさずにうかがっていた。
顔は白いマスケラで隠しているので、それに気がついているのはレベッカだけだ。
「誰かを…探しているのですか?」
無言になったクロード
その仮面の下の表情が険しくなったように感じられて、レベッカは場の異変を察知した。
“ 奥の方が、なんだか騒がしい…? ”
レベッカたちが休んでいる所とは反対側。
ダンスを楽しむ人々を挟んで対称の場所に、不自然な人だかりができていた。
その者たちの服装が、不自然なのだ。
あれは舞踏会用の正装ではない。あれは…。
“ ……衛兵? ”
レベッカにはそう見えた。
「クロード?あそこにいるのって衛兵じゃあ…、あっ」
隅で固まった衛兵たちの、そのうちのひとりがチラリと此方を見た気がした。
──レベッカにも理解できた。
確かに…この状況はよくない。
「あの人たち…まさかあなたに気づいたのですか?」
「──でしょうね」
クロードはまだ、ワイングラスを片手に壁に背を預けていた。
「動揺してはいけない、レベッカ。彼等と目を合わせないことです」
「…っ、そうですね」
仮面をつけていて良かった。そのお陰で表情を少しは隠してくれる。
向こう側も、まだ確信が持てないようで動き出す気配はなかった。
「恐らく、先日、私が忍び込んだ邸の貴族もこの舞踏会に来ていたのでしょう」
「それで勘づかれたのですね」
「……ハァ、隠しきれない華やかさというのも、困りますね。目立ってしまう」
「ふざけている場合じゃありません…!」
大袈裟に溜め息をつき、頭を垂れたクロード。
でも確かに彼の言う通りだ。
その見事なブロンドの髪ひとつをとっても…彼のような男はそうそういるものではない。
たとえ今の彼が仮面をつけていようとも、もとの怪盗もつけているのだから何の変装にもならない。