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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義

「──レベッカ、ワインは飲み終わりましたか?」

「…え?はい」

 クロードが顔をあげた。

「グラスを渡しなさい」

「どうぞ」

「……それから目を閉じなさい」

「…? わかりました」

 レベッカは空いたグラスを彼に渡して目を閉じる。

 クロードは彼女の手をとると、その足を静かにホールの出口へと向けた。

 すると…それに気がついた衛兵たちが、自らも出口へと歩き出した。

“ 逃がす気は無いということですか ”


……


 仕方がない



「……?」


 クロードの言う通り目を閉じたレベッカだが、彼の考えが読めないので不安でしかたがなかった。

 彼女の肩を抱き寄せたクロードは、もともと立っていた窓辺の壁際へと引き返す。

 衛兵たちがその後ろ姿を目で追っている──。


 クロードは


「──…」


 彼等に背を向けたまま、手にしていた二つのワイングラスを高く空中に放り投げた。




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