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略奪貴公子
第12章 怪盗の正義
「……っ…???」
「……ハァ、ハァ、ハァ」
「…ね…っ、ク、クロード…!?もう目を開けても大丈夫…!?」
彼の言いつけに従い、ずっと目を閉じていたレベッカ。
不安な気持ちで彼の腕に導かれるままに歩いていると、突然ガラスの割れる音が響き
そして人々の悲鳴が起こり──
次の瞬間にはクロードに抱きかかえられて、あっという間にここまで運ばれてきたのだ。
肌に当たるひやりとした空気と、耳からはいる情報で、今、自分を抱えたクロードが外を走っているのだけはわかった。
「まだ開けてはダメですか?」
「ハァ、ハァ……まだです」
目を開けてはいけないと彼が言うのだから、ただその肩に手を回してじっとしていることしかできなかった。
クロードの息が切れている。
「クロード…!?」
「──…っ」
「大丈夫なのっ…?わたしっ重くないですか…?」
「それを聞きますか」
「……」
「……答えましょうか?」
「…あ…いや、やっぱりいいです……っ」
クロードは夜道を駆け抜けながら、慎重に周囲の様子を伺っていた。
腕の中ではレベッカがまだ目を開けてはいけないのかと聞いてくる。
──別にもう、開けても何の支障もない。
だがクロードは許可しない…こんなときでも意地が悪い、というわけだ。
「……」
だが一応は真剣だ。彼は背後の足音に気を配った。
“ 後ろから、この道を追っているものがひとり… ”
どうする?
道を変えるか。
あの角を曲がるか?しかし、その先に身を潜める物は見当たらない。
それに草影を歩けば音で見つかる
「この庭を抜け出るのは難しいか…」
仕方がない…一度、どこかに身を潜めましょう
もしここで兵に見つかれば流血がおきる
そんな血、見るのは御免ですからね
なにより彼女にとっては──。
普段の彼なら姿を見られてもふりきって逃げるのだが、レベッカを抱えた今の状態ではすぐに追い付かれてしまう。