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略奪貴公子
第3章 潜む影には……

 レベッカを乗せた馬車は日の沈みきった夜に公爵邸に到着した。

「…ではレベッカ様、私はここまでです」

「あ…」

 公爵付きの使用人達に迎えられたところで、付き添いの男は入れ替わるように彼女に別れを告げた。

 去っていく、今までの暮らしが

 ──彼女ひとりを残して。

 だがレベッカに感傷(カンショウ)にひたる時間は与えられず、冷え込む前にと城の中へ招き入れられた。

 中に入るとそこには広々としたホールがあり、奥にはなだらかな階段が続いている。

 レベッカは二階にある部屋に通された。

“ …まぁ…なんて豪華なの ”

 彼女が驚くのも無理はない。

 肌触りのよさそうな美しい絨毯(ジュウタン)が床一面にしかれ、天蓋付きの大きなベッドや、細かな装飾の施された調度品がきちんと用意されている。

 田舎の一貴族と公爵では…ここまで違うものなのか。

 レベッカはしみじみと部屋を見渡した。

「──ここがレベッカ様の寝室になります。必要な物は一通りそろえております」

「あの…、公爵様は?」

「今晩は不在でございます。レベッカ様は長旅の後でお疲れでしょう。…ひとまず、詳しいことは明日より」

「わかりました」

 付き人のメイドはそう言って彼女の寝支度を手伝う。

「では失礼いたします」

 そして灯したランプはそのままに…間もなく部屋を後にした。


 彼女は本当にひとりになった。

「……」

 ……そう思うと、また、寂しくなる。

「──少し風にあたりたいわ」

 そんな気持ちを切り替えようと、レベッカは奥にある窓に目を向けた。


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