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略奪貴公子
第15章 人相書き
レベッカの他にも誰か気付いただろうか。
「父上の他にも、見覚えのある人はいるかな」
食卓を囲む面々を、エドガーが順番に見ていく。
…その最後、レベッカと目を合わせてニヤリとした。
“ ……駄目だわ ”
レベッカは目眩(メマイ)がするほど追い詰められ、今すぐ部屋から飛び出したかった。
“ エドガー様は気付いている。怪盗の正体も、わたし達の関係すらも…….! ”
気付いたうえで楽しんでいるのだ。
落とした物の代わりに新しく渡されたスプーンを持つ手が震えて、カタカタと音がなってしまった。
──
「奥様の体調がすぐれないようですね」
「……っ」
クロードと瓜二つの人相(ニンソウ)書きを前にして気分が悪くなったレベッカに
ふいに、召使いのひとりが声をかけた。
グラスに水を注いでいた彼は、そう言ってレベッカの顔を覗き込む。
“ この人は……! ”
レベッカは目を丸くした。
他の召使いと同じ制服に身を包む彼は、プラチナブロンドの髪にグリーンの瞳……。
そう、クロードの付き人、レオだったのだ。
どうして??と喉まででかかった言葉を呑み込む。
レオの冷静な目は、何も口走るなと無言で伝えてきた。
「そうだな…レベッカの顔色が悪いようだ」
公爵、ベノルトがそれに続いて呟く。
「誰か彼女を部屋で休ませてやりなさい」
「では私めが、奥様を寝室にお連れします」
公爵に命じられたレオが彼女の椅子を引いた。
「え…??」
レベッカは何がなんだかわからなかったが、とりあえずはレオに従うのが得策だろうということで、大人しく立ち上がることにする。
少し面白くなさそうな顔をしたエドガーだったが、黙って彼女を行かせた。