この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
略奪貴公子
第15章 人相書き
二度と会えない……?
まさか、そんな、と、現実から目をそらしたくなる。
でも、そういうことなのだ。
よりにもよって家人に正体を見破られてしまった。次に彼が尋ねてくれば問答無用で捕まるだろう。
それだけじゃない。人相書きは公爵家の力で国中に出回る。舞踏会をだいなしにされたバイエル伯爵だって、人一倍に見栄を気にする人物であるから、血眼(チマナコ)で怪盗を探す筈だ。
そんな危険な状態になれば、クロードが国を出ていくことも十分にありえる。
国を去れば……二度と戻ってこないのだろう。
「もう……クロードは、わたしに会いに来てはくれないのですか……?」
「……」
「もう二度と……?あなたはそれを、わたしに伝えに来たのですか?」
さっきは来るなと言ったのに、次の瞬間には、来てくれないのかと聞いてしまっている。
なんて身勝手なのだろう。レベッカは自覚していた。
「……」
肯定も否定もしないレオ。彼は自分がそうすることで彼女の心がよけい乱されるとわかっていながら、答えない。
「答えてレオ!」
「レベッカ様、貴女は随分、無防備ですね。そうやって私につめよると……簡単に唇を奪えてしまえますよ」
「…っ…ふざけないでください、今はそんな」
「いいえ、貴女は今のお立場を考えてください。主(アルジ)がここへ来れないということは、貴女はひとりこの城で戦わねばならないということです。これからますます多くの者が貴女の行動を注視するでしょう」
そう言いレベッカの両肩を持って距離をとる。彼女はそこではじめて、自分がレオに近付きすぎていたとわかった。
確かに彼女のまわりには多くの目が光っている。クロードとの関係を怪しむ声から始まり、レベッカが誰か男と話しているだけでその関係を疑われる。
なによりエドガーだ。彼はレベッカがクロード…つまり怪盗と繋がっていると怪しんでいる。
クロードを心配する前に、彼女は彼女で非常にまずい立場であると自覚すべきだ。