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略奪貴公子
第15章 人相書き

「これからは軽率な行動はつつしみます。…っ…とり乱してごめんなさい」

「いえ」

 レベッカが俯き、大人しくさがった。

 レオはさっさと寝室に向かって歩き出す。背中を見せて歩く彼を……レベッカはもう一度、呼び止めた。


「もうひとつだけ──…教えていただきたいの」


「…何をでしょうか」


「彼の…クロードの、《 大切な女(ヒト) 》を、あなたは知ってる?」


「……?」


 レオが振り返りもせず立ち止まった。レベッカからは見えないところで眉を潜める。


「いったい何の話でしょうか」

「昔…大切な女(ヒト)を失ったと、わたしが眠っている時にクロードがそう言ったような気がするの。ねぇ、あなたは何かご存じ…?」


《 私は自身の無力さ故に、大切な女を失った 》


 あの夜。自分は眠っていたはずなのに、何故かこの言葉だけ記憶の片隅に残っている。

 クロードは誰かと話していたのだろうか、何も思い出せないけれど…!

「もしかして…クロードには…」

 自分から呼び止めておいて、言葉をつまらせるレベッカ。彼女は答えを聞くのが怖くもあった。

 それでもすがるような声で聞いていた。


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