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略奪貴公子
第16章 宝を守る武器
それから雨が降り始めた。
外には行けないので、二人は菓子の皿を持ったままレベッカの寝室に入った。
部屋の隅にある小さなテーブルセットには、ちょうど椅子がふたつある。そこに腰かけて皿を置いた。
トク トク トク トク.....
メイドがティーセットを運ぶ。
飲みやすいアールグレイの香り豊かなポットと、カミルのための沢山の砂糖を添えて、コップに紅茶が注がれる。
「…………」
湯気をながめるカミル。
「苦くないのよ?飲んでごらん」
「…貴族さまってへんな飲み物ばっかりだねぇ。クロードさまも面白いのを飲ませてくれたな」
それはカミルが初めてクロードの別荘を訪ねた時にふるまわれた、ホットミルクのことだ。
「白くて、甘くて、あったかくて」
「何かしらそれ…」
レベッカは、大きな鍋で白い液体をグツグツ煮込むレオの姿を無意識に想像していた。
“ その飲み物、怪しいわね… ”
鍋を混ぜるレオの後ろで不適に笑うクロードが見える…。ただの想像なのだが、少し怖い。
「…っ…これは全然怪しい飲み物じゃないから!
安心して飲んで大丈夫よ」
「わかった!いただきまっす」
ゴック ン
「甘い~♪」
出された砂糖をほとんどいれてしまったので、カミルがたった今飲んだのは紅茶というよりは砂糖湯。
砂糖入れすぎかも
レベッカはそう感じていたのだけれど、砂糖を見たときのカミルの目の輝きっぷりを見たら何も口出しできなかった。
「それで今日は、何をしにここまで来たの?またクロードを探して来たのかしら」
「ちがうよ。クロードさまはいま、お屋敷にいる」
「そう…」
「僕はね、この近くの街までおつかいに来たんだ」
「何のおつかいに?」
「これっ」
カミルが上着のポケットから取り出したのは、折り畳まれた小さな羊皮紙だった。