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略奪貴公子
第3章 潜む影には……


「……?」


 暗い庭園に影が見え隠れしていた。あれは…


“ 人だわ ”


 レベッカそう判断した。

 人で、それも男だ。マントに身を隠しているがそのくらいは判別できる。

 男は身を屈め花の隙間から外の様子を伺っていた。

 暗い庭で灯りも持たず…明らかに怪しい。

“ あの人、何者……? ”

 その男からは、何か不思議な雰囲気を感じた。

 確かに花壇に身を潜めているのだが、怯えているようには見えないのだ。

“ いったい何から隠れて──? …あ…ッ ”

 そしてレベッカは息を呑む。

「──…」

 不意に顔をあげた男が、バルコニー上の彼女の姿を見つけたからだ。

「……っ」

 男と目が合うことはなかった。何故なら…彼は仮面をつけていたから。

 マスケラと呼ばれる、顔の上半分を隠した白い仮面──。

 その仮面が、真っ直ぐ彼女を見上げてくる。

 レベッカに後ろめたいことなどありはしない。だがどういうわけか慌てているのは彼女の方だ。

“ 怪しいのは向こうの方なのに…っ ”

 覗き見ていたレベッカが悪いとでも言いたげに。


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