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略奪貴公子
第17章 ほどかれた真実


 ──…



 そして日が西の空に消え去り…雨が一段と激しくなったその夜のこと。

 クロードの別荘の門の前で、ひとりの子供が彼の名を叫んでいた。

「──クロード様、門前でびしょ濡れの子供が貴方の名を呼んでおりますが…どうされますか」

「ハァ……お前は相変わらず意地の悪い男ですね。早く入れてやりなさい」

「かしこまりました」

 寝室まで尋ねにきたレオに、クロードは溜め息とともにそう言葉を返した。

 命じられたレオは少年を迎えに外に出ると、屋敷の中に彼を入れて、その濡れた身体をタオルで拭いてやった。

 少しして、そこにクロードが現れる。

「カミル、雨がひどくなり大変でしたね」

「クロードさま…」

「鍛冶職人は見つかりましたか?」

「…うん」

「そうか、なら──」

 クロードは彼の目の前まで足を進めると、その場にさっと座り目線を合わせた。

「…何故泣いているのです?」

「…グスッ…、クロードさまっ…ごめんなさい」

「……」

 クロードは目を細める。

 カミルは泣きながら話した。

「…僕っ言ったんだ…レベッカさまに、首飾りのこと」

「──…」

「ごめんなさい…!」

「──カミル」

「…っ」

 謝るカミルは名を呼ばれて、その小さな肩をビクりと反応させた。

 クロードは、そんな彼の肩に優しく手を添える。

「謝る必要などない」

「…! でも」

「風邪をひく前に帰りなさい。お前の母上が夕飯をつくって待っていることだろう」

 そしてクロードは立ち上がった。

「私の心配なら不要です。お前は気にせず帰りなさい」

「クロードさま…僕は」

「……」

「──レベッカさまが、心配なんだ…!」

「…なるほど」


カツ カツ カツ ....


 彼はゆっくりとカミルに背を向けて廊下を歩く。





《 それは私も同じだ── 》




 振りかえることなく…心の中で呟いていた。




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