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略奪貴公子
第17章 ほどかれた真実
自室に戻ったクロードは椅子に腰かける。
長い脚を組んで座り、右手の机に置かれた読みかけの本を手に取る。
手に取った本の表紙を眺めながら、口を閉ざしたクロードは……なかなか本を読もうとしない。
パラッ…
しばらくして、やっとページをめくる音がする。
「──…」
挟まれた栞をぬき取って
本を片手にその栞を机に置く。
……ハァ
「ノックぐらいしてはどうですか」
「…いたしましたが」
それから、扉の前に黙って立っている男に、クロードはため息まじりに声をかけた。
「何の用です?」
「ノックにも気がつかないほど物思いにふけておられる、我が主の様子を伺いに」
「…レオ、言いたいことがあるのなら早く言ってはどうですか」
「……」
村へ帰るカミルを見送った後、クロードの寝室に入ってきたレオは、本を読む主の背中に無言で視線を送っていた。
パラッ
その後の数分──
部屋を包む沈黙に、しびれを切らしたクロードが再び口を開く。
「あいにく私は読心術など心得ていない」
「──…」
「文句があるならさっさと言え……私はそう命じている」
「文句とは心外です」
レオは扉の前から動かない。
「…ただ、いつまでもそうゆっくりしている余裕はないように思えますが」
「…余裕がない?」
「あの憐れな公爵夫人──
彼女は貴方の裏切りに気づかれたのでは?」
裏切りに気づいたあの夫人はどんな行動をおこすのだろう。
自分ならば
知ってしまった事実を全て公爵に話し、自らの潔白だけは晴らそうと直訴(ジキソ)する。