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略奪貴公子
第18章 退屈な少年
「素晴らしい挨拶でしたよ」
伯爵の寝室を出たのち、感心した声で男はそう言った。
「君の有能ぶりはすでに聞いていたがね。まだ歳は二十二だと聞いたが、さすがだ」
「ありがとうございます」
「旦那様は予定通り、君をクロード様の付き人にするご意向だ」
「……」
クロード…
レオは彼に関する情報をまだあまり与えられていなかった。
確か彼は、ブルジェ伯爵の第二男。第一男のダニエル様とは二つ違いと聞いたから、クロード様は十四歳ということになる。
『 少し手がかかる子だが… 』
伯爵はそう言っていた。いったいどういう意味なのか。
「クロード様はこの時間、ダンスのレッスンを受けているはず…。着いた、この部屋だ。…………おや?」
レオをクロードに紹介するためにやって来たのだが、彼がダンスを習っている筈の部屋の前で男は異変を感じた。
ピアノの音が聞こえてこない…
「失礼します」
部屋の扉を開ければ、やはりそこに踊る人影は見つからなかった。
「…クロード様はレッスンを抜け駆けですか」
中の様子を確認したレオがぽつり呟く。
「ああ…っ、そうかもしれん」
「私が探すべきなのですが、生憎(アイニク)、クロード様を拝見したことがないもので」
クロードを探しには行けない。レオは使用人頭にそう言った。
「──…探さずとも私はここにいる」