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略奪貴公子
第18章 退屈な少年
その時、不意に二人に声がかかる。
「クロード様! そこにいらっしゃいましたか…!」
奥のカーテンの影に隠れていたのか。そこに人が座っていたことに二人は気がつかなかったようだ。
カーテンの奥で、窓枠に腰かけた美貌の少年はその手にバイオリンを持っていた。
「──…君は誰?」
そう言ってこちらを向いたクロードだが、その目つきから察するに…とくに興味があるようには思えない。
使用人頭は慌てていた。
「クロード様…!本日は宮廷舞踊のレッスンを受けるようにと、旦那様に申し付けられた筈では!?」
「そうですね」
だがクロードは悪びれる様子もない。
「確かに習いましたが…、あの方には私の先生となる資格がないと判断しましたので」
「……っ」
「…帰っていただきました」
「なんですと!?」
使用人頭はかんかんだった。
そんな彼の怒りを煽るように、クロードはバイオリンをかまえて優雅に音を奏で始める。
「……っ」
男は唇を引き結び、レオを残して早足に部屋を出ていってしまった。
「──…」
まともな紹介もされずレオは部屋に置きざられた。
クロードはドアの前に突っ立ったままの彼に構うことなく、優雅にバイオリンの演奏を続けている。
~♪~♪ ♪
「……」
~♪
「──…」
カタン
そして不意に演奏をとめた。
「…いつまでそこにいるの?」
彼はレオに話しかけた。
「クロード様の演奏が終わるまでです」
「……」
「まだご挨拶ができておりませんから」
「…なら」
レオの返事を聞いて、クロードが顔を此方に向く。
「なら、私がこのまま弾くのを止めなければ、君はずっとそこに突っ立っていると…そういうことかい?」
「…そうなりますね」
「ふぅん」
窓枠に腰かけていたクロードは立ち上がってレオに身体を向けていた。
一方のレオは全くその場から動かない。
「つまらないな」
クロードが呟いたのは不平の言葉だった。