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略奪貴公子
第18章 退屈な少年

「退屈なんですよ…何もかも」

「そうですか。では先ずはきちんとダンスを習われてはいかがですか?」

「習ったさ」

 宮廷舞踊も、バイオリンもピアノも…

 歴史や語学、剣技に馬術

 女性を喜ばすための紳士としてのマナー

 多くの人間が教育係としてクロードの前に現れては…そして口を揃えてこう言うのだ。



『 さすがクロード様、完璧でございます 』


……



 それならば教わることなど何もない

 さっさと私の前から立ち去ってくれ



「──それは天才の憂鬱でしょうか」

「そうだよ」

 話を聞いていたレオが切り出すと、クロードはなんの謙遜もみせずただ頷いた。

「…紳士のマナーを学ばれたのなら、謙遜という言葉を教えられたはずですが」

「大丈夫です。女性の前では紳士ですから」

 クロードは組んだ脚に頬杖をついてにっこり微笑む。

 早く私を楽しませろ。エメラルドの瞳がそう命令してきた。

「仕方がありませんね」

「…♪」

 レオの言葉を聞いてクロードの瞳が期待で輝く。

 しかし

「レッスンをおサボりになられた次いでに、今から屋敷を脱け出しましょう」

「…?」

「退屈しのぎに、貴方をお連れしたい場所がございます」

「…」

 期待していた目の輝きが一気に沈下する…。結局はなんの面白味のない男だったかと。

「…やはり君には、私の世話人は務まりませんね」

 クロードはがっかりした様子でピアノ椅子から腰をあげ、レオに背を向けた。



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