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略奪貴公子
第18章 退屈な少年

「お久しぶりです!」

「ローザ、お母様の体調はどうですか」

「レオさまのおかげで、ずいぶんよくなりました」

 少女は笑って、頭につけた大きな赤色のリボンをクルクルと指に巻き付ける。

「まだ…もう少し休んでなきゃいけないらしいんだけど…」

「そうですか」

 少女の言葉に軽くうなずき、レオはクロードの方に振り返る。

「お母様にはゆっくり休んでいただくといい。その代わりに、あちらの少年が働いて下さる」

「え?そうなの?……わぁ」

「…?」

 レオがそう言って、初めて女の子はクロードの存在に気がついた。

「あの人…スゴくきれい…!」

 ローザと呼ばれたその少女は目を輝かせる。

「ほんとに男の人?──女の子みたいっ」

「……!」

 次に彼女が放った言葉は、クロードの耳にも届いた。

「この私が女?それはまた面白い冗談を言ってくれますねお嬢さん、私が男に見えませんか?」

「わぁ…声もきれぇ」

「……」

「髪の毛もキラキラ素敵な色……わ、目はレオさまとおんなじグリーンなのね」

「……」

「宝石みたい!」

 こんな風に純粋な声でたたみかけられて、クロードは何も言い返せなくなっている。

「──クッ」

 二人のやりとりを見守っていたレオが静かに笑いを噛み殺す。

 それもクロードは見逃さなかった。

「レオ……」

「…失礼いたしました。なるほど、ローザにはクロード様が女性に見えてしまうようで」

「それは侮辱と受け取っていいのか?」

「まさかそんな…」

 クロードは明らかに機嫌を害していた。

 それになんとなく気がついた少女が、申し訳なさそうな声で謝る。

「ごめんなさいっ、だって本当にきれいな方だったから」

「気にすることはありませんローザ。では早速、クロード様にも男らしく汗をかいていただきましょうか。そうすれば、女性と見間違われることもなくなるかと」

 レオの意図することをよみ、クロードは口を閉ざした。



 そして…

 口の端で不敵に笑みを浮かべた。



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