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略奪貴公子
第3章 潜む影には……
「……」
彼女がそれに続く言葉を言わないので、衛兵は互いに目配せをしてから彼女に聞き返した。
「……お聞きしたいことがあるのですが」
「何ですか?」
「庭園の中に怪しい男がいませんでしょうか。そこから見渡して頂いて…」
「怪しい男……」
怪しい男──
“ いるわ…とても怪しい人が ”
レベッカは再び溜め息をついた。
そして彼女は庭全体を見渡す振りをして、もう一度、男の姿を確認した。
「……!? 」
何故、逃げないの…?
彼はまだそこにいる。
その場所からなら彼女たちの会話が聞こえている筈だ。なら、彼女が男の居場所をばらせば衛兵が捕らえに来るということもわかるのに。
男は逃げない
むしろ焦りの様子すら見せない。
“ わたしがばらせば、あなたは捕まるのよ…? ”
レベッカの方が妙な焦りにおそわれる。
彼はどうするつもりなのだろうか──レベッカは仮面の男の動向を見守った。
「……」
白い仮面が花壇の影から衛兵を見ている。
そして──
スッと、頭上を見上げた。
「……ッ 」
「──…」
彼女を真っ直ぐ仰ぎ見たその男。
マスケラの下の整った唇が、僅かに、開いたかと思うと……口角が柔らかく上がり、彼はその顔に妖しい笑みを浮かべたのだ。