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略奪貴公子
第3章 潜む影には……
……
《 ──誰もいません 》
次の瞬間、彼女はそんな言葉を口にしていた。
「……」
「誰も……いません」
「そう…で御座いましたか。協力頂き感謝します」
「……っ」
衛兵は立ち去る。
レベッカは…自分の行動が信じられない。
何を馬鹿なことを。
今からでも遅くない。早く呼び止めて…ッ
そう思っても声に出なかった。
自分の嘘を信じた衛兵たちはそのまま見えなくなってしまった。
「……な…っんで」
レベッカは驚きを隠せないままに男を見る。
“ 何を考えてるの、わたし…っ ”
ここからでは暗くて彼の表情までは読みとれない
なのに…!
笑った気がしたのだ。見える筈がないのに。
“ 確かに彼はわたしを見て笑った ”
そしてそれを感じた瞬間、今までに経験したことのない、背筋の凍りつくような感覚が彼女を襲ったのだ。
──彼はまだ此方を見ている。
レベッカの動揺は益々強まっていった。