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略奪貴公子
第18章 退屈な少年
──…
──それから、三日後の夜。
「……ハァ、ハァ」
暗く長い屋敷の廊下を、息を切らし、そして潜めて…走り抜ける影があった。
その影が角を曲がったとき、さらに数人の足音が追いかける。
「──…やっぱり誰かいたよな?いま」
「あの角だな」
曲がり角を指差す。
怪しい気配を感じた彼等は、廊下の角へ向かって走る。
曲がった先は袋小路。部屋の扉が並ぶのみ。
そこに人の姿は見当たらなかった。
──気のせいか?
「──!?」
だがその瞬間、ひとつの部屋からガラスの割れる音がとどろいた。
やはり侵入者!
彼等は音のした部屋へ迷うことなく踏み込む。
「…っ、窓が割られている!」
予想通り、部屋の奥の、はめ殺し窓が割られていた。
泥棒だ。そうに違いない。金を持たない農民が…金目(カネメ)のものを目当てに侵入したに違いない。
彼等はそう思った。
しかし…
割られた窓から下を見ると、そこには彼等の予想と異なる姿があったのだ。
「よく見えないがまだ若いな?それにしても」
逃げる後ろ姿からは、侵入者の顔を見ることはできなかった。
けれどまだ少年に見えるその細身な背中…。何よりその服装は、汚ならしい農民のものとは到底思えなかったのだ。
「まずは捕らえてからだ!」
──