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略奪貴公子
第19章 口止め

 夜が来るのを待ち、クロードをはじめ館の者が寝静まるのを確認して、その計画は動き出す。

 クロードの寝室の前で、夫人は慎重にドアノブに手をかける。

「──…クロード様に用でございますか?」

「…!?」

 ところが、いつの間にか背後に知らない青年が待ち構えていた。

 どきりとした夫人は慌ててドアノブから手を離した。

「…な…っ、何でもないわ」

「……」

 人を訪ねる時間ではない。

 夫人はあせる気持ちを落ち着かせようと、相手の姿をじっと確認する。

「お前はたしか…?」

 真っ暗な廊下でかろうじて見える青年の顔。

“ そうだわ…クロードには新しい付き人が… ”

 若い男が新しい付き人に選ばれたと聞いた。

 この青年がそうなのかしら…?

「……」

「部屋をお間違えでしたら…奥様、寝室までお送りいたしますが」

「……そうね」

 この若さで

 この落ち着いた声と態度

 ──使えるわ

 夫人はそう判断した。

 クロードの付き人ならさんざん我が儘に振り回されているはず。この青年も同じような扱いを受けているに違いない。

 ならクロードを恨んでいる──

 彼は味方になるはずだ。と、夫人はそう考えたのだ。

 レオはそんな企みを知ってか知らずか、夫人を寝室まで送り届けた。

「おやすみなさいませ、奥様」

「……待ちなさい。貴方に頼みがあります。こちらへ来なさい」

「──…。畏まりました」

 そして夫人の寝室へと姿を消したのだった。


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