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略奪貴公子
第19章 口止め

 ハッとした夫人は彼を睨む。

「なによあなた…!わたくしに歯向かう気…!?」

「──…」

「クロードを庇うの!?」

「これだから……後始末のできない子供は手が掛かる」

 レオは声色を低くして、小さく呟いた。

 レオの醸し出す空気が変わったことを直感的に感じ取った夫人は、眉を潜めて彼の顔を覗き見た。

「あなた…!?」

 笑みの消えた夫人の表情が、徐々に険しくなっていく──。

「…あなた、いったい何を考えているの?」

「──…特に…何も。ただ、嘆いているのでございます。クロード様の愚かな行動を、そして…奥様、貴女の愚かさを」

「…っ…な、んですって…!?」

 思いもよらない暴言が夫人の頭を混乱させる。

 その時、レオの着用する使用人服の袖口から、きらりと光るものが見えた。

「…! それは…?」

「…奥様がお探しの物と存じますが」

「どうしてお前が持っているの…っ」

 レオが袖のボタンをゆるめるとそこから現れたのは金色の腕輪だった。細かな装飾が彫られたそれは、まさに家宝と呼ぶにふさわしい代物。

 ──レイモン伯爵家の家宝だ。

「…!?」

 何故、それがここにあるのか

「レイモン伯爵家の庭園で見つけました。騎士の彫像の槍の先に引っ掛かっていましたよ」

「…っ」

「──ちょうど処分に困っていたところです。奥様にお渡ししましょう…」

「え…!?」

 レオは腕輪を取り外して夫人に差し出す。

「これを使って試されるといい。屋敷のみながどんな反応をするのかを」

「そんなの…彼等は我が儘なクロードに愛想を尽かしてるに決まっているもの。これをきっかけにあの子を追い出そうとするに決まって…──!」

「──そうでしょうか」

 確かにクロードは我が儘で手が掛かる。

 …だから愛想を尽かされているのか?

 伯爵家を継ぐのはダニエルなのか?


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