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略奪貴公子
第20章 揺れる想い


「……っ」


 わたしはもう、彼を憎んではいないの

 彼のせいで、恋に落ちたの

 なのに──


『 私は自身の無力さ故に大切な女を失った 』


『 あの方はずっと、ある女性を探しておられた 』


『 クロードさまは、このお城に狙っている宝物があったんだ 』


 どうしてなの?クロード……!




 部屋に閉じこもり、悩み苦しむレベッカ。

 彼女の頭の中でクロードとの思い出が色鮮やかに駆け巡っては、裏切られた切なさが何倍にもなって押し寄せてきていた。

「わたしは騙されていただけなの…?」

 あなたはわたしを利用しようとしただけなの?

 カミルが言ったことは本当なの?


『 このお城には…っ…公爵さまの宝物があるんだ、それで…それでクロード様は、その宝物を盗りに 』

『──…』

『 レベッカ様には言っちゃダメだって、言われてたから隠してたんだ…!本当に…ごめんなさい 』


 純粋なカミルには隠し通すことなどできなかった。

 カミルによって知らされた事実は、レベッカを大きく混乱させた。

 公爵家の家宝、アフロディーテの首飾り。

 ベノルト様から直接聞いたことはないけれど、噂でなら知っている。

 代々受け継がれてきた由緒正しきその首飾りは、正しく、宝と呼ぶに相応しい。

 怪盗のクロードなら放ってなんておけないだろう。

「…どこまでが、真実?」

 どこからが 、偽(イツワ)り?

《 ──私だけの姫よ 》

 あなたの言葉、愛の言葉──

 見つめる眼差し、熱い唇

 わたしを夢中にさせたそのすべてが

 今、これほどにわたしを苦しめる…



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