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略奪貴公子
第22章 決意の涙

「──…ならお前のせいで、レベッカは公爵家に売られたのか…っ」

「…?は?はぁ?なにを言ってる」

「オイレンブルク家の連中は、お前の悪事の証拠を掴んでいたんだ。国へ送る税収を横流し──使い込んでいたお前の不正の証拠をな!」

「…!」

 彼の話は、レベッカにとっても初耳だった。

 エドガーの不正?悪事の証拠?

 オイレンブルク家…つまりレベッカの義父母たちが、その証拠を掴んでいたと?

“ だったら、わたしの婚姻は……?ベノルト様が、歳の離れたわたしを妻としたのは……まさか ”

 レベッカの中でずっと疑問に思っていたことが、徐々に明るみになる。難解だったパズルのひとつがはまってしまえば、残りのピースが正しい位置におさまるのは簡単だった。

「オイレンブルク家は……わたしを公爵に嫁がせるのを条件に、エドガー様の不正の証拠を握りつぶしたのね……?」

 レベッカが、アドルフに問う。

 アドルフは悔しさのあまり彼女のほうを見れなかったが、頷いた。

「…そうだ」

 田舎の貧しい貴族の娘が、公爵家に嫁いだ理由──。公爵家にとってなんの利益もないこの婚姻は、裏取引の結果なのだ。

 当主であるベノルト・モンジェラ公爵は、息子の不正が世に出ることで、内政が傾くのを恐れた。よってオイレンブルク家の条件をのみ、レベッカを受け入れた。

 今思えば…初夜いらい、公爵がレベッカに触れようとしなかったのも、彼女への負い目がそうさせたのか。


「お前がのうのうと生き延びてるのはレベッカのおかげだ。…なのにっ、ふざけたマネしやがって」

「そっ…そんなのは嘘に決まっている!取引の話など俺は一度も…」

「公爵が隠そうとしても噂になって広がるもんだ。この城の連中は知ってたんだよ。ただのメイドまで、全員な。お前は城中の笑いものだ」

「…う…嘘だ…そんなわけ…」

「…チッ」

 アドルフはいつものように大きく舌打ち、鼻がつくほどの距離で相手を威圧してから、荒々しく突き放した。

 アドルフが立ち上がると、動けるようになったエドガーはよろよろと出口へ向かう。腰がぬけた様子でなんとかドアノブを握り、逃げるように部屋を出た。







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