この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
略奪貴公子
第22章 決意の涙
アドルフは何かを呑み込むように口許を歪ませた。
そして彼は、ベッドに添えられたレベッカの手首を掴んで引っ張った。
手首を引かれたレベッカは思わず問いかける。
「何をするの?」
答えは返らない。男の力にはかなわなくて、滑り落ちるようにベッドから降りて床に足をつく。
「待ってアドルフ…どこに行くの…?」
.....グイっ
「痛いわ…っ」
レベッカは戸惑った。
自分を何処かへ連れ出そうとするアドルフの真意がわからない。
「……」
アドルフは彼女の手首を掴んだまま、その場に立ち止まった。
「どうしたの…、アドルフ…?」
「──…お前をこの城から連れ出す」
「……っ」
「この城から連れ出し、公爵に見つからない所へお前を逃がす…」
彼は真っ直ぐな瞳で
──まるでレベッカを睨むようでもあったが
静かな声でそう告げたのだった。