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略奪貴公子
第4章 来客がお見えです
身支度を整えたレベッカは寝室を出た。
昨夜も歩いた長い廊下を進んでゆく。
エマに案内されるまま部屋に入ると、そこには長いテーブルと、その両端に椅子が二つ。
レベッカは、片方の椅子に腰掛けた壮年の紳士に挨拶した。
「お待たせして申し訳ありません、公爵様」
そう言ってドレスの裾を少し摘まんでお辞儀をした彼女を、その紳士は笑顔で迎えた。
「その堅苦しい呼び方はしなくていい、レベッカ。君も席に着きなさい」
「はい公爵…──、…ベノルト様」
笑顔を向ける公爵にレベッカも微笑む。
そして彼女が席につくと、先ずは前菜から二人の前に運ばれてきた。
「君はまだ昨夜着いたばかりだからね。一族との食事はまた後日にしよう。今晩も私と晩餐を共にしてくれるかい?」
「もちろんです。お心遣い感謝します」
公爵から次の食事の誘いを引き受け、他愛もない会話をしながら朝食を続けた。
レベッカが嫁いで来たのは
この国に二つとしかない公爵家のひとつ
Bernold Herzog von Montgelas
ベノルト・ヘルツォーク・フォン・モンジェラ
モンジェラ公爵家の家主である男だ。
由緒正しき公爵家に、貴族の末端のような身分のレベッカが嫁ぐなど普通では考えられないが…。こうして見初められた彼女を周りの令嬢は羨むだろう。
事実、その待遇の良さは彼女が身をもって実感している。
モンジェラ公爵の評判は社交界でもかなり高い。…まさに申し分のない相手だろうか。