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略奪貴公子
第4章 来客がお見えです

 しかし二人には親子ほどの歳の差があった。

 Herzogin Lebecca von Montgelas
 レベッカ・ヘルツォーギン・フォン・モンジェラ

 十九歳の彼女は、モンジェラ公の第三夫人。

 もう歳も四十を超えた公爵が新たに迎えた婚約者。

 壮年ながらも若かりし頃の端整な顔立ちを残した公爵だが、この歳の離れた二人の婚姻を疑問に思う者は少なからずいるだろう。

 ──それはレベッカも同じである。

 公爵にはすでに二人の夫人がいて、世継ぎの男子もいる。なのにどうしてこのタイミングで、レベッカとの婚姻を進めたのか…。

 わからないけれど、今さら落胆することではなかった。

 落胆したところで……

 自分には何の選択肢もないのだから。

 相手を選ぶ権利など持っていない、自分には。




“ いけない、わたしはまた… ”

 レベッカは頭の中のイヤな考えを振り払う。

 朝食を終えた彼女は自分の部屋に戻り、式用のドレスを仕立てるために寸法を測っていた。

“ またいつもの癖で、諦めの気持ちが先に出てきてしまう ”

 エマに腰回りを測られながらレベッカは自嘲気味に笑みを浮かべた。

 これが自分の運命だからと
 貴族の娘なのだから当たり前だと

 彼女はいつもそう自身に言い聞かせている。

 ──それでは駄目だとアドルフに言われた。

 わかっている、本当は彼女だって

 普通の女の子のように《 恋 》に憧れぐらい持っている。

 ベノルト様は確かに尊敬できる御方だ。

 でもときめくような相手ではない…。

 レベッカは少しだけ寂しい目をしていた。…背後のエマはそれに気付かない。

“ 誰かにときめく気持ち、…もうわたしには無縁のものになるのかしら ”



 その時、ドアの向こうからヒソヒソと楽しげな会話が聞こえてきた。



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