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略奪貴公子
第23章 硝子の音

「──…?」

 レベッカは庭園のいっかくのテラスから、最上階の窓をじっと眺めていた。

 破られたのは昨夜のことだというのに、もう職人をよんで修復作業が始まっている。

 入り口は、庭からの地下通路

 首飾りは、螺旋階段の下の隠し部屋

 そして脱出したのが…最上階?

「…エマ、あの窓はいつ直るの?」

 レベッカはエマに聞いてみる。

「割られたのはあの一枚だけですし、夕刻には元通りになるはずですよ」

 テラスのテーブル席に座るレベッカの隣で、エマも同じように最上階の窓を見上げて答えた。

「ベノルト様はどんなご様子かしら」

「旦那様は、怪盗を捕らえるために目撃者を集めているところです」

「当然ね。大切な家宝ですもの」

「ただでさえエドガー様の件で頭をかかえているでしょうに…旦那様は大変ですね」

「……」

 王宮の大臣によって、エドガー公爵子爵の不正が暴かれたのはつい六日前のことだった。

 エドガーはバイエル伯爵と手を組んで、民から集めた税の中から、国庫に納めるはずの一部を使い込んでいたらしい。

 二人は詰問のために王都に招集されたというから、さすがの公爵もこれ以上息子を庇えないだろう。


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