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略奪貴公子
第24章 怪盗の宝


 けれど──

 咄嗟にレベッカは身体の向きを変え、その手を拒むように、彼から逃げた。



「……!」



 ガシッ....!



「──何故、逃げる…」


「ぁ、ぁ……!クロー、ド……!」



 だが彼女の行く手は阻まれた。

 背後からレベッカを抱き締めたクロードは、逃げることを許さなかった。

「…私から逃げるつもりですか」

 私から逃げて…
 公爵から逃げて…

 ここを出ていくつもりですか。

「…‥離し、て」

 抱き締められたレベッカは顔を俯かせて声を微かに絞り出す。

 無駄とわかりつつもがきながら、彼の腕に抵抗する。

 そんな彼女のすぐ真上にはクロードの唇があり、言葉を囁き続けていた。

「…本当に離していいのですか?」

「……そう、です……いったん、離して…っ」

「こういう時、貴女は必ず反対のことを言いますからね」

 せっぱ詰まったレベッカに対して、余裕の微笑みでクロードが顔を覗きこむ。

「──可愛いことをしてくれる」

 その囁きと同時に彼と目が合う。

 一瞬で吸い込まれそうになるレベッカは、雷が落ちたように硬直して、息を呑んだ。




 ………もういやだ



 こんなふうに、この人に振り回されるのは




「──もう!いい加減にしてよ!」


「……!」


 次の瞬間、レベッカが声を張り上げた。



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