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略奪貴公子
第24章 怪盗の宝
「わたしは…あなたを疑っていません…っ」
興奮した様子のレベッカの目は仄かに赤く、涙が滲んでいるようにも見える。
「…あなたを信じました! わたしは、あなたを信じて待つ…って…、そう決めたの…!」
だから──
彼女は公爵家を裏切った。
尊敬する公爵から大事な家宝を奪い
優しいエマに心配をかけ続け…
そして、アドルフを傷付けた。
「それでも…信じたの…」
クロードの正体を知っていても
彼の狙いに気付いてしまっても
その想いが掴めなくても
それでも信じたかったから…。
張り手をくらわしたまま、彼に向き合って立っていたレベッカ。
強気な瞳に涙をため込んだ彼女は、睨み付けるような目のまま、……その表情をくしゃりと崩した。
……そっと彼に近づき、彼の服の胸元をつかんで顔を埋めた。
「レ……レベッカ?」
「少しだけっ…このままでいさせてください…!」
すすり泣く彼女の肩が震える。
「触らないで!」
「…っ」
クロードがその震える肩に手を回しかけると、レベッカが怒鳴った。
ビクリと止まったクロードの手──
けれど彼はそのまま彼女の肩を包んだ。
「‥‥ッ‥グスッ‥‥あなたって本当に‥」
レベッカの涙は止まらない。
「‥‥本当に‥自分勝手‥‥!わたしより」
「──…」
「──さんざん、わたしに付きまとった癖に…急に音信不通で…姿を見せなくなった癖に…!
なのに、今度は、こんなに唐突に…っ」
まるで何もなかったかのようなすました顔で
今までどおりの余裕な態度で
現れたあなたは変わらず魅力的で…。
「…どれだけ振り回せば気がすむのですか」
「──…」
「どうしてこんなに…っ…嬉しくなってしまうのですか……!?」
わたしばかり翻弄されて…
少しは、怒りの気持ちが沸いてきてもいいはずでしょう?
なのにこの鼓動はおかしいくらいに高鳴るばかり。