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略奪貴公子
第24章 怪盗の宝


「たとえあなたに、忘れられない想い人がいたとしても…それでも好きなのっ…あなたみたいな悪党が…」


 わたしの周りには優しい人が沢山いた。

 それでも、心を奪われたのは彼だった──。




「…レベッカ」

 クロードは圧倒されたまま、自身の胸で涙を流す彼女を見下ろしていた。

 顔を上げたかと思えば

 高揚した声で《 好きだ 》と伝える彼女──

 真っ直ぐ見上げてくる潤んだ瞳。

 クロードはたまらず彼女の顎に指を添え、その唇を奪っていた。

「……っ」

 それは触れるだけの優しいキスに留まり、二人は互いを見つめ合う──。

 そして力強く彼はレベッカを抱き締めた。

「──…困りました」

「…?……グス……ふ……ッ…」

「…私は貴女を奪いにきたのです。これではまるで想定外だ」

 計画も心も、狂わされた

 この愛しい令嬢に──。

 …クロードは不思議に思った。

 どんな高価で美しい宝でも、一度盗んでしまえばそこに何の魅力も見いだせない。

 だから彼は、奪った宝をいつもすぐに手離していた。

 けれど今は違う

 奪って尚、さらに、この姫を誰にも譲りたくない…!



 そして彼は気付く



 …本当の宝とはそういうものなのだと。




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