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略奪貴公子
第24章 怪盗の宝

 それは特別豪華な見た目をしているわけてはないが、美しいという称賛が何より似合う代物だった。

 一目見ただけで、この首飾りが公爵家の家宝だと思い知る。

 そんな首飾りを、クロードは差し出すように両手で持っていた。

「アフロディーテの首飾りは代々の公爵が、花嫁に求婚するときに贈っていたと言われている」

「……」

「しかし首飾りを狙う者が花嫁を襲った事件をきっかけに、城の奥へと隠されることになった。……以来、誰の目にも触れず…暗い部屋で輝き続けていたのです」

 ひざまづくクロードは一度腰をあげて、固まったままのレベッカに首飾りをつけたのだ。

 彼女の白い肌の上で

 銀色の首飾りは喜ぶように輝きを増す。

「……やはり美しい首飾りは、美しい女が身に付けてこその価値ですね」

「…そう…ですか?」

「ええ、とても綺麗だ……」

 彼の言葉を聞いて、レベッカは頬を赤らめる。

 自分の首にかけられた首飾りの重みと、マントの温かさを感じながら…。

 そんな彼女を見て目を細めて微笑んだクロードは、再びその場にひざまづいた。





「 …私は、私を、まともな人間とは思わない。


 故に私は臆病だ。


 真意を隠してばかりの言葉も、笑みも…


 飾り付けられた傀儡のソレに、何の価値も無い。


 この愛し方も…とうに歪んでいるのだろう。


 しかし、レベッカ──私は


 貴女のことを愛しく思う。


 真に、貴女こそを宝と思う。


 その想いは冷めない…


 心を奪うだけでは満足できない。


 私は貴女の全てを望む。


 貴女の全てを欲してしまう。


 この想いを叶えたまえ………… 」




「──…っ」




「──…私だけの姫よ」




「結局…っ」




 貴女がわたしにくれる言葉はいつもどおりの美しさ──。

 謝罪の言葉も何もないあなたは、プライドはやっぱり人一倍。

 世間知らずなわたしの心を掻き回し、ひたすらにわたしを酔わせようとする。




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