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略奪貴公子
第25章 Epilogue──1
首飾りが怪盗に盗まれたという一件は昨日のうちには街中に広がっていたので、アドルフの耳にも入っている。
…つまりそれは、伯爵がレベッカを裏切ったことを示していた。
予想はとっくにしていたことだ。
“ あいつは伯爵を信じると言っていたがな ”
裏切られたレベッカは城を出たのか…。
彼女の心中を想うと、騙した伯爵への怒りが込み上げて止まらない。
「なら公爵は、家宝の首飾りと…そして夫人。たったの二日でその両方を失ったわけか。災難だな」
「…あ…それが…」
「……何だ?」
「首飾りは戻ってきたのです…!」
「──!どういう…ことだ」
盗まれた首飾りが戻ってきた?
「今朝、みなでレベッカ様を探したのです。そうしたら城の屋上庭園で…首飾りが見つかりました」
「何故、盗られた筈のものが…!?」
「そして、残された首飾りにはこれが添えられていて……!」
エマはスカートのポケットから、手のひらほどの小さな紙を持ち出した。
その羊皮紙には文字が書かれている。
アドルフはそれを奪うように取った。
──
《 宝は確かに、頂きました 》
そこに刻まれた筆跡を
アドルフは確かに知っていた。