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略奪貴公子
第25章 Epilogue──1
街からひたすら馬を走らせ、館中を探した彼はひどく疲れており、後から後から汗がしたたる。
彼は額のそれを手の甲でぬぐい、深く息をして部屋を見渡した。
そこにはベッドや書棚などの家具があるだけで、人が住むために必要なものが何一つ見当たらない。
──すでに住民は、ここを捨てた後だった。
「…っ…?」
そうとわかり脱力するアドルフは、部屋の机に置かれた──ある手紙を見つける。
その机はクロードが普段、本を読むのに使っていたものだ。
アドルフは最後にそこへ向かい、置かれた羊皮紙を拾い上げた。
《 Adolof 殿──
依頼した剣を受け取れず、申し訳ない。
Claud─Michel・Geofrroy・de・Bourgeat 》
したためられていたのは、そのひと言。
手紙の内容はそれで終わっていた。
....
「──それだけかよ!」
アドルフが大きな舌打ちとともに吐き捨てる。
「…ハァ…ハァ、く…ッそ…!」
最後までからかいやがって…!
彼の脳裏にクロードの顔が浮かぶ。結局、眼中になかったのか。俺は……!
《 …まだ子供だ 》
「…っ」
ギリッ.....!
あいつに言われた言葉がいちいち俺の腹をえぐる。
…あの澄まし顔も、すべてが気にくわない。
“ 俺はもっと…っ、あんたに言いたいことがあったんだ…! ”
あんたが俺に言い残したのは
たったこれっぽっちなのかよ──