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略奪貴公子
第25章 Epilogue──1
アドルフは手紙をおいて、自らの腰に下げた剣を手に取った。
鞘から半分だけを引き抜き、現れた白刃を眺める。
「せめてこの剣を…見てから行けよな」
それは彼の最高傑作…。鋭い切っ先は鋼の美しさをまとい輝いていた。
彼はそれを鞘に納め、腰から剣帯を外して机の上に剣を置いた。
代わりに手紙を再び手にして、くしゃりと潰してポケットに押し込み……寝室を後にした。
館の扉を開けてゆっくりと外に出たアドルフ。
そこで彼は、柵越しにこちらを向いて立つひとりの子供に気が付いた。
「お前は……?」
「クロードさま…いなくなっちゃった…」
アドルフが門の柵を飛び越えて出てくるのを、その少年はじっと見つめていた。
「たしか、カミルつったか…お前」
「……うん、そうだよ」
少年は笑うことなくアドルフの言葉に頷いた。