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略奪貴公子
第4章 来客がお見えです
それ、どう考えても…
“ 昨日の男の人だわ……っ ”
ああ、やってしまってわ。
わたしが手を貸してしまった怪しい男が、まさか泥棒だったなんて…。
昨夜の一連の出来事から思い当たるふしがありすぎる。
なら昨日は、商人の屋敷に盗みに入って逃げていたということ。
豪商ともなると貴族と変わらぬくらいの財を持っている。あの衛兵たちは商人お抱えの兵士に違いない。
彼等から逃げて公爵の庭に入り込んだ泥棒を、レベッカが逃がしてしまったのだ。
──なんて事をしてしまったの
世話係たちの会話はまだ続いていた。
「さすが怪盗…、怪盗はやっぱり美形に限るわね」
──何でそうなるの?
「しかもね彼は逃げた後に、きまって置き手紙を残していくの!」
──手紙…?
「へぇ~、何が書いてあるの?」
「Der Appetit kommt beim Essen 。…欲には限度がない、ですって。なんだか謎めいていて素敵じゃないっ//」
「怪盗様…// きっと欲深い商人や貴族への当て付けね、格好いいわ~!」
──格好いい……ですって?
“ 泥棒に対して格好良いなんてどうかしら…?それに欲深いのはどっちよ ”
レベッカは納得できなかった。
人の物を盗むなんて、どんな理由があろうと卑怯な行為だ。
何より、昨夜の怪盗の態度が気にくわない。
「わたしに見つかっておきながら逃げないなんて。まるで…わたしが衛兵にばらさないと初めから予想していたかのよう…っ」
「何か仰いましたかレベッカ様?」
「…っ…あ、何でもありません」
苦々しげにひとりボソボソ呟いていると…
心配したエマに顔を覗きこまれた。
“ 結局最後には、後から現れた男の子に見つかってわたしの方が隠れるように部屋に戻ってしまった ”
「なんでこっちが隠れるはめに……悔しい」
「?」
レベッカが不機嫌になるのが見てとれる。
やはりドア向こうの話し声のせいかしら…
後できちんと注意しないと。
エマはそう決めて採寸を進めた。