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略奪貴公子
第4章 来客がお見えです
コンコン
「失礼します」
採寸が終わり、エマたち数人のメイドが道具一式を持って部屋を後にしようとした時に外から声がかかった。
「はい」
「ただいまお時間よろしいですか?」
「ええ、今終わったところよ。何ですか?」
そしてドアが開けられる。
「旦那様とレベッカ様へ、来客が御見えです」
「──来客…。どのような御方?」
レベッカは首をかしげた。
昨夜ついたばかりというのに、もうわたしを訪ねる者が…?
「フランスの伯爵様です。お二人のご結婚に祝辞を申したいと…そう言っておられます」
──
「お待たせして申し訳ありません」
彼女は応接間に通された。
そこには既に客人もいる──。
「来たのかい」
「ベノルト様。この方は…?」
入ってきたレベッカに公爵が手を差し出すと、彼女はそこに自分の手を重ねた。
そして改めて、公爵は客人に顔を向ける。
「彼女が私の妻になります。レベッカ?挨拶を」
それを合図に、椅子に腰かけていた客人は立ち上がり、彼女に微笑みかけた。
「──…ッ 」
「……」
「…あ…っ、初めまして。──レベッカ・ヘルツォーギン・フォン・モンジェラ、…と、申します」
名を言って頭を下げたレベッカ。
…その口調は少したどたどしい。
なぜだろう。それは…目の前のこの男に原因がある。
彼女の挨拶を受けて、男は微笑みはそのままに自らも口を開いた。
「──美しい公爵夫人だ」
「……っ」
「モンジェラ公が羨ましい限りです」
" 美しい " と言ったその声の方がなおさら…男とは思えないような柔らかな美しさをまとっている。
レベッカのような若い女を動揺させるには十分だ。
「私は……
クロード=ミシェル・ジョフロワ・ド・ブルジェ
─Claud─Michel・Geofrroy・de・Bourgeat
この度は私用のためフランスから此の国に参りましたところ、モンジェラ公が新たに夫人を迎えられたと伺いましたので、ご挨拶に参りました」
フランスから来たという彼は、そう言って深く頭を下げる。
再び顔を上げたその時、長いブロンド髪から覗いたエメラルドグリーンの瞳が、彼女を見据えて優しく光った。