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略奪貴公子
第26章 Epilogue──2


「 " あれ " は私の母だ 」

「──‥え?‥は‥母‥‥??」

「そうですよ」


 どういうこと?

 レベッカはますます戸惑っていた。

 クロードの母上なら知っている。ここに来たときに紹介された。いい雰囲気ではなかったけれど。

 少なくとも、あの肖像画の女性ではなかった筈だ。


「私の父はブルジェ伯爵。そして母は館で働く一介の召し使い。──つまり私は不義の子なのです」

「…ふぎ、って」

「伯爵家は、母から私を取り上げた」

「そんな…」

 クロードの母は貴族ではない。

 彼の兄、ダニエルの乳母としてやってきたその女性が…クロードをその身に宿したのだ。

 伯爵夫人は当然のごとく怒った。

 しかし伯爵の寵愛をうける彼女を無下には扱えず、館から追い出すのはあきらめ、彼女から子供を取り上げて自分の子として育てることに決めたのだ。

 それからクロードの母は…肩身の狭い思いをしながら伯爵家に遣え続けたのだという。

 ──幼きクロードはその事実を知らされず育ったが、頭のいい彼は気付いていたのだ。

 自分が伯爵夫人の子供でないこと。

 ある召し使いが自分へ向ける視線が……実の子を見るように一途で、温かなものだということに。



 .....



『 …ねぇ、君 』


『 …っ…はい、クロード様、どうされました? 』


『 僕はいま絵画の勉強をしているんだ 』


『 ──?そうでございますか 』


『 だから肖像画のモデルをしてくれないかい 』


『 …!…私などがそんな…っ、いけません! 』


『 君がいい。だから早く支度をして 』


『 ──…! 』




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