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略奪貴公子
第26章 Epilogue──2
さらに頭のいい彼は、彼女を母と呼ぶのは許されないということを……小さいながらに理解していた。
お互いに、一度も口には出さなかった。それでも二人は幸せだったのかもしれない。
──しかし、伯爵が病に伏せたころ
タイミングを見計らっていたかのように、夫人はクロードの母を館から追い出してしまったのだ
それはクロードが十二の歳の時だ。
まだ子供であった彼は成り行きを黙って見るしかなかった。
「もし私が…彼女は自分の母だと騒ぎ立てれば、母の立場はますます悪くなりこんな罰ではすまされなくなる」
「──…」
「自分は無力なのだと思い知ったのは、後にも先にもあの日だけだ…」
実の母が追放されるのを幼きクロードは黙って見ていた。
彼は自身の無力さ故に、大切な人を失ったのだ。
「クロード…っ…ごめんなさい…!」
「…何故、謝るのです?」
「だってわたし、そんな事とは知らずに…」
レベッカは自分がどうしようもなく矮小(ワイショウ)な心を持っていたのだと、恥じるほかなかった。
勝手にクロードの " 大切な人 " に嫉妬をし、ひとりで悩んでいた。
まさか彼にそんな過去があったとも知らず。