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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート
「あの…っ、うちのメイドにいちいち色目を使わないでくださる?」
「……?」
スープを一口飲んだ彼は、彼女の声に応えてスプーンを置いた。
「色目とはおかしなことを。…可愛らしいお嬢さんを前にして、自然と笑みがこぼれるだけです」
「──どうせわたしは可愛くありませんしね」
「それは誤解ですよ」
なにが誤解…っ
わたしに対してだけ態度を素っ気なく変えるくせに。
「あなたにも微笑みかけるように心掛けた方がよろしいですか?」
「…っ、いりません」
彼の本性を知った今、無意味に微笑まれても余計に腹が立つだけだ。
むすっとした顔で食事を再開したレベッカを、クロードは頬杖をついて覗き込む。
「──…」
「──なに?なんですか?」
覗き込まれたレベッカは鋭く睨み付けて返した。
対してクロードは、余裕たっぷりの表情で口を開いた。
「そのように不貞腐れなくとも……先日のあなたはとても可愛らしかったですよ」
「…先日?」
「先日…あの夜──」
「……!」
レベッカの顔が一瞬でひきつる。
「だ、黙ってください!」
そして思わず声を荒げた。
同時に、押さえつけていた感情がふつふつと沸き上がってくる。
あの夜の屈辱、羞恥、怒り──
この男の恐ろしい本性と
忘れたいほど淫らな自分……。
それらを掻き消そうとするかのように、レベッカは右手を振り上げ、隣に座る男の頬を叩こうとしていた。