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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート

「…それほど私を殴りたいのですか?」

 わざわざ場所を変えるほどに…──と

 人の気配がなくなったのを確認してクロードがレベッカに問いかけた。

「──当然です」

 レベッカは立ち止まる。

「殴るだけでは晴れないほどですもの」

「……、女性を抱いて恨まれたのは初めてだ」

「……っ」

 この自信に溢れた態度──

 今までどれだけ周りの女に、ちやほやされてきたかがわかる。

 少し顔が綺麗だからって
 伯爵という身分だからって

 どんな女も自分の虜(トリコ)になると思っている。

 人の気持ちは──そんなに単純じゃないのよ?

 思い知ればいいのに。

「やっぱりこのままでは終われません…。というよりあなたには一度、女に殴られるという経験が必要だと思うの」

「ふふ……それはそれは」

「そうすれば、その天狗(テング)の鼻も少しは短くなるのではなくって?」

「──…クッ、なるほど天狗ですか」

 彼は笑いを噛み殺す。

 ──かと思えば、ふっと目を細めて真剣な表情になった。


「確かに天狗かもしれない。……いや、私は天狗にならざるを得なかったのです」


「??」


「欲しいものは何であろうと手に入る。少し微笑みかければ、どんな女性も私の手に落ちる」


「……」


「私の人生は実に簡単なゲームの連続だ」



“ 勝ってばかりは、つまらない ”

“ 何かを本気で手にいれたいと…そんな強い想いは知らず知らずに消え去ってしまった ”


 どこか遠くに向けられた彼の視線──


──スッ


 その視線が、不意にレベッカに下りてきた。



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