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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート
──しかし
しかしその結婚は、神々からの反対を受けることになる
想い合うのに、結ばれない
それに苦しみ──悩んだ二人
神々に仲を引き裂かれ
それに絶望したクロッカスは、自らの死を選んでしまった
──残されたスミラックスは悲しみに打ちひしがれ、嘆きの日々をおくる
「花の神フローラは、そんな二人を憐れみ…彼等を花に変えたのです」
そのひとつがこの花、クロッカス。
そして、羊飼いの乙女が変えられたのは…
「──サルトリイバラ、ですよね」
思わずレベッカは口を挟んだ。
「おや、ご存知でしたか」
「……ギリシャ神話は好きです、わたし」
「でしたら後日、神話の書物をあなたに贈りましょう」
「いりません!」
泥棒にもらうものなんて何もないわ。
レベッカはフイとそっぽを向く。
その時、彼女の腕をクロードが掴んだ。
「…っ…何…!?」
「後ひとつ、私の愛する春の花があるのですが…」
「……」
「……見に行きましょうか」
「見に行く…、まさか、今から…?」
「──そうです」
「うそ、あ、ちょっと待っ…ッッ」
彼女が返事をするよりも先に、その小柄な身体は男にふわりと抱き抱えられた。
....
伯爵──否、怪盗に、さらわれたレベッカ。
彼女は強く抵抗できなかった。
城門の外には白い馬が一頭、手綱でくくりつけられていた。
クロードは抱き抱えたレベッカを一度おろして馬に跨(マタ)がり……上から手を差し出した。
「──…」
レベッカはその手に
自分の手を重ねてしまった。
怖さももちろんあったけれど…
同じくらい興味を持ってしまったのだろう。クロードという人間に…。
───