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略奪貴公子
第6章 外界へのエスコート

ガヤ ガヤ ガヤ ……

 こんな賑やかな場所は久しぶりだ。

「……すごい活気」

 オイレンブルクの街の人々は、その日の生活に必死という感じで…こんな綺麗な街並みではそもそもなかった気がする。

 このような人混みも初めてだ。

 トコトコと馬の背に揺られながら、レベッカは横を慌ただしくすり抜けて行く人々を見下ろしていた。

「あら貴族様!ここの靴、見ていかれない?」

「素敵な旦那様!ぜひ店にお立ち寄りをー!」

 売り子たちの声が馬を引くクロードに向けられる。

 彼はそれらの呼び声に簡単な反応を示しながら、人混みをぬうように歩き続けた。

「この街の人々はとても活気がある。モンジェラ公の統治が成功している証ですね」

「そう…ですね」

「人混みは苦手でしょうか?」

「そんなことはありません」

 人が元気な町は、いるだけで気持ちがいい。そう思えばこの騒がしさも苦ではなかった。

「──それなら良かった。では私も少し買い物を」

「……?」

 クロードは顔を横に向けると、その先にある店に近づいていく。

「ここは果物屋?」

「朝食の途中で脱け出しましたからね。お腹をすかせているのではと」

「…っ」

 鋭い…!

 実は、空腹

 彼はそこでリンゴを紙袋で受けとると、ひとつをレベッカに手渡し、再び馬を歩かせた。

「それに──…銀食器で出されるコース料理より、こちらの方があなたの好みに合うのでは?」

 この人は…いちいち鋭い

「い、いただきます…」

「クスッ……。ええ、どうぞ」

 不満げに頬をふくらませてリンゴに口を付けたレベッカを、下から楽しそうに見上げる彼はやっぱり意地悪だ。


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