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略奪貴公子
第8章 再会
「のっ、のぞき魔ですって!?」
「だって!上のテラスからこそこそ僕らを見てたじゃないか」
「な……//」
少年の口から出てきた心外(シンガイ)……というか無礼?な言葉に、レベッカは取り乱していた。
「わたしはのぞき魔ではないですし、それに…覗かれて困ることをしてたのはどっち!?」
「べ…べ…、別に…っ…困ることなんて……ししししてないもんね!」
「いい? あなたたちはあの日、ド・ロ・ボ・ウ をしてたのよ。わかってる?悪いことなの!」
「…っ!!…だって…」
彼女のあまりの剣幕に、少年は勢い負けする。
怯んで口ごもったかと思えば、また柱の後ろに隠れてしまった。
「だって…」
「──…」
柱から聞こえる力の無い声──
少し落ち着いたレベッカは、腰に手をあててふぅと溜め息をついた。
…周りを廻廊(カイロウ)に囲まれた中庭では、中央の噴水がアーチ状に水を噴き上げている。
レベッカはその噴水に目をやって、…そして子供が隠れている柱に視線を戻した。
「あの…怒って悪かったわ。もう怒鳴ったりしませんから、出てきなさい」
「……、…ほんと?」
「ええ、本当」
こんな小さな子供を相手に、怒鳴り声ではいけないだろう。
レベッカは熱くなった自分を静めてゆっくりと…柱の奥に語りかけた。
「怒らない?」
「怒らない」
「捕まえたりしない?」
「捕まえない」
少年の言葉を繰り返すレベッカ。
しばらくして安心したのか、彼は柱の影から姿を現した。
「…君の名前は?」
「カミルだよ」
レベッカが名を聞けば素直に答える。
「わたしはレベッカです」
「そっか…、レベッカさまはこの城のお姫さま?」
「──お姫様?」
小さな子供はまだ、貴族の中の呼び名や肩書きなんてわからないのだろう。
城に住んでいる女性は、取り合えずみなお姫様なのだ。
お姫様──
その言葉に含まれているなにかキラキラとしたイメージが可笑しくて、レベッカは思わず笑ってしまった。