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略奪貴公子
第8章 再会

「ふふっ…そうね、お姫様かもしれないわ…。あなたは何者なの?カミル」

「何者って…っ、別にドロボウなんかじゃないぞ」

「それはわかっているから。いつもは、何してるのかを聞きたいのです」

 レベッカに近づこうとしていたカミルは、一瞬だけその足を止めた。

 彼女が信頼できる人かどうかがわからないのだ。

「なに?やっぱり泥棒?」

「ちっ、違うよ!ドロボウじゃないよ!」

「シーッ…!静かにしないと見回りの衛兵に見つかるわよ」

「あ、そっか…」

 ハッとしたカミルは両手で口をふさぐ

 その裏表のない…ころころと変わる彼の顔が面白くて、可愛くて

「……っ」

 レベッカは口許に手をあてて、必死に笑いを噛み殺そうとしていた。

「……へへ」

 カミルもつられて照れ笑いをする。

 そして彼は中庭に入って噴水にぴょんと飛び乗ると、その上に座ってレベッカに振り返った。

「──レベッカさまってさぁ、他の貴族のおばちゃん達と雰囲気違うよね」

 なんだか話しやすい。カミルはそんなふうに言った。

「……、そこにいたら濡れちゃうわよ」

「平気、平気」

 噴水の水しぶきがカミルの髪にかかっている。

「こんなのいちいち気にしてたら…僕らは生きていけないんだもん」

 レベッカに心を許した様子のカミルは、屈託のない笑顔を彼女に向けていた。

「僕ん家は、父ちゃんと…母ちゃんと姉ちゃんで、畑でお仕事してるんだ」

 カミルは、穴だらけの自分の靴をパンパンと叩きあわせる。

「畑仕事…農家なのね。どこの村?」

「ここからは遠いーよ。ちっちゃい村なんだけど、おーきなジャガイモ畑が自慢なんだ!」

 彼の目はキラキラしていた。

 それはきらめく噴水の水しぶきよりも美しい──。

 これが子供の無邪気さだ。レベッカは妙に納得した。


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