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略奪貴公子
第8章 再会

 メイドに用意させた焼き菓子は、芳ばしい匂いで二人の食欲を動かした。

 人目につかない木陰のベンチで、はしゃぐカミルとお菓子をつまむ。

 口一杯にほおばりながら、彼は自分のことをたくさん話した。

 好きな女の子の話、かわった形のジャガイモの話、母親が縫ってくれたズボンの話…。それらは楽しく、つきることを知らなかった。


 ──そうして時間が過ぎてゆく


「──ねぇ、そろそろ帰らなくて大丈夫?お家はここから遠いんでしょう?」

 暗くなる前に帰さなければと、心配したレベッカが問いかけた。

「帰りの荷車が出るまでもう少し時間があるんだ。見つからないようにのりこめば、家の近くまで行けるんだよ」

「……。それ…誰に教えてもらったの?」

「へへ、クロードさま~」

「ああ、そうなのね。…………ハァ」

 たくましいのは良いことだが、レベッカにしてみれば複雑な心境だった……。

「ならその時間まで一緒にいてあげる」

 そして、カミルの帰りの荷車を待つまでの時間、カミルと遊んであげることにしたレベッカは…

「ほんと?じゃあ一緒にかくれんぼしよう!」

 という彼の提案にのることになった。

「かくれ…え?なに?」

「レベッカさま、もしかしてかくれんぼ知らないの?う~ん、なら僕が鬼になってあげるから、急いで隠れて!」

「わかったけど…っ」

 あまりにも急な展開。

 でもレベッカに戸惑っている時間はないらしい。

「30秒数えるからね。
 いーち! にーい! さー…」

「カミルっ、静かにしなきゃ」

「そっ…そっか、
 いーち…、にー…、さーん、…よーん」

 数える声が小さくなったところで

 かくれんぼのルールもよく理解していないレベッカは、言われるままに急いで隠れ場所を探した。


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