この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
略奪貴公子
第8章 再会
メイドに用意させた焼き菓子は、芳ばしい匂いで二人の食欲を動かした。
人目につかない木陰のベンチで、はしゃぐカミルとお菓子をつまむ。
口一杯にほおばりながら、彼は自分のことをたくさん話した。
好きな女の子の話、かわった形のジャガイモの話、母親が縫ってくれたズボンの話…。それらは楽しく、つきることを知らなかった。
──そうして時間が過ぎてゆく
「──ねぇ、そろそろ帰らなくて大丈夫?お家はここから遠いんでしょう?」
暗くなる前に帰さなければと、心配したレベッカが問いかけた。
「帰りの荷車が出るまでもう少し時間があるんだ。見つからないようにのりこめば、家の近くまで行けるんだよ」
「……。それ…誰に教えてもらったの?」
「へへ、クロードさま~」
「ああ、そうなのね。…………ハァ」
たくましいのは良いことだが、レベッカにしてみれば複雑な心境だった……。
「ならその時間まで一緒にいてあげる」
そして、カミルの帰りの荷車を待つまでの時間、カミルと遊んであげることにしたレベッカは…
「ほんと?じゃあ一緒にかくれんぼしよう!」
という彼の提案にのることになった。
「かくれ…え?なに?」
「レベッカさま、もしかしてかくれんぼ知らないの?う~ん、なら僕が鬼になってあげるから、急いで隠れて!」
「わかったけど…っ」
あまりにも急な展開。
でもレベッカに戸惑っている時間はないらしい。
「30秒数えるからね。
いーち! にーい! さー…」
「カミルっ、静かにしなきゃ」
「そっ…そっか、
いーち…、にー…、さーん、…よーん」
数える声が小さくなったところで
かくれんぼのルールもよく理解していないレベッカは、言われるままに急いで隠れ場所を探した。