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略奪貴公子
第8章 再会
ガサッ ガサッ
「んっと…」
“ この辺りでいいのかしら ”
中庭は隠れるには狭すぎる。
渡り廊下をひとつ隔てた、前庭の方向にレベッカは足音をたてないように移動した。
途中の木の影に身を潜め、背中越しにカミルの様子を伺う。
「……」
にじゅういーち
にじゅうにーい
「……」
にじゅうさーん、にじゅうし
「──…」
にじゅうご~
──その時だ
「──!!…っんんッッ」
木に背をつけて背後のカミルを見ていた彼女は、前方から現れた何者かに、口を塞がれて木に身体を押さえつけられた。
それは突然すぎる出来事で
「……んッ…っ…んんんー!」
驚きと恐怖に縮こまったレベッカは、目をかたく閉じて、塞がれた口で精一杯、助けを求める声をあげた。
「……んっ、んんー!」
こもった悲鳴
「──…静かにしろよ」
「……っ」
「見つかったら不味いんだろ?…あのガキに」
「………!?」
この、声は──?
その声は、鼓膜を震わす低音で──。
恐る恐る、目を開けるレベッカ。
パチッ.....!
「──…!」
目の前の彼は近すぎて、その顔をよく見ることができない。
見えるのは、彼の着ている白地のシャツと、ざっくりとあいた衿(エリ)からのぞく厚い胸板…。
「…口塞いでる手、どかして欲しいか?」
「……コクリ」
懐かしくてしかたない──幽かな鉄の匂いがその男から香った。