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略奪貴公子
第2章 見初められた花嫁



 ──しかしそんな二人にも、別れが訪れようとしている。



「この前連れて行かれた舞踏会でね、わたしを見たその御方が目に止めて下さったみたいなの」

 レベッカは心なしか弱々しく笑ってみせる。

「御義父様たちの狙いどおりよ。…だって相手は公爵様だもの。わたしなんかには、もったいないほどの御身分だわ」

「……」

「──不満なんて無い」

 このために自分は養子にされた。レベッカは全てを理解していた。

 七年前、まだ少女ながらも将来を期待させる彼女の容姿こそ…オイレンブルク家の人間が引き取ろうと決めた理由なのだから。

 美しく成長させゆくゆくは何処かの高貴な殿方に

 …それが周囲の狙い。

“ わたしは道具として買われただけ ”

 だから道具として売られたって仕方がないのよ。

 レベッカはとっくの昔に、この運命を受け入れていたのだ。

「相手の男を見たんだろ?」

「見たわよ。とても紳士的な方だった」

「あ、そう」

「…歳は、御義父様と同じだったけれど」

「……ッ」

 おっさんじゃねぇか、と呟いたアドルフを、下品な言い方はやめてと制する。

「そういうものよ貴族なんて。歳なんて気にするものじゃないわ…」

 そう、これは貴族の娘として普通のこと。貴族の娘に恋愛結婚なんてまずあり得ない。

 今さら嘆くことではないの。



「なんか癪にさわるな」


「……?」


 そうやって淡々と話を進めるレベッカに、声色を低くしたアドルフが顔を向けた。



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