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略奪貴公子
第8章 再会
「──…久しぶりだな」
「……」
アドルフ…!
「なんで…あなたがここに…」
「静かにしろ…。簡単に見つかって、あいつをがっかりさせたいのかよ」
「……っ」
解放された口でレベッカが言葉を発すると、有無を言わさず遮られる。
その高圧的な態度はまぎれもなくアドルフ…彼女の幼馴染みに間違いなかった。
レベッカは
「ね、ねぇ…ちょっと…!」
彼の身体によって木の幹に押し付けられている。
「──どうかしたか」
「どいてよ…苦しいわ…」
「しかたねぇな」
レベッカに胸を叩かれたアドルフは、しばらくした後やっと身体を引いた
艶のある黒髪も、臙脂(エンジ)色の瞳も…。身体をかがめてこちらを覗きこむ彼の顔は、やっぱりアドルフに違いない。
「…悪いな…ドレスを汚したかもしれない」
アドルフは所々にすすの付いた彼のシャツを気にしている素振りだった。
「そんなことどうでもいいけれど……」
「──…しっ、来たぞ、座れレベッカ」
「…ん…っと」
カミルが三十秒を数え終わった。
その声が途絶えたのを察知したアドルフはその場にしゃがみこむと、レベッカの腕を引く。
レベッカも半ば無理やりに、花壇のすみに隠れる形となった。
スカートの裾(スソ)に土が付く
──ついさっき、ドレスの汚れを気にしてくれたんじゃなかったの?
いきなり現れた彼に振り回されるレベッカだった。
「…浮かない顔してんな」
アドルフが声を潜めて囁いた。
「だって、あまりにも急だったから」
「──だから?」
「…驚いたの」
「なら作戦通りだ」
ニヤリと笑う。
レベッカは逆に、不機嫌な表情で眉を潜めた。
「──あまりにも急だし、唐突だし」
「まぁな」
「それに言葉もなしにいきなり口を塞がれて…やり方が強引だし、乱暴だし」
「……」
「せっかくの再会なのに、何の感動もできなかったから……」
「・・・・・」
こうして少し落ち着いた今、久しぶりのアドルフを目の前にして…
「──なんだかイラっとしてきたわ。わたし」
「……………」
冷静さを取り戻し、不満を並べるレベッカの言葉を聞いて
「ちっ、面白くないな…っ」
少し反省するアドルフ…。