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略奪貴公子
第9章 招待状
「公爵家に嫁いだら、友人と話すことも許されないの…?」
突然に突きつけられた言葉に高ぶった感情を抑えきれず、レベッカの目から涙が溢れてくる。
「あんまりです…そんな」
「──もういい、レベッカ」
「でもっ…アドルフ」
黙って聞いていたアドルフがそんな彼女に言葉をかけた。
「俺は確かに貴族じゃない」
「……っ」
「今度からな…ちゃんと正式に会いにきてやるよ。公爵夫人に謁見(エッケン)を申し込んでな。許可がおりると思えねぇが」
「そんな…謁見だなんて言わないで」
レベッカはまだ納得していないが、アドルフは妙に冷静だった。
「おい、エマとか言ったか?女」
「…!…なんでしょうか」
「俺のことで…レベッカにおかしな噂がたたないようにしてくれ」
こいつを守れ
「も、勿論でございます…!」
エマもまたレベッカに連れられるように涙を滲ませ、悔しげな表情で頷いていた。
悔しい…
こんな酷い言葉をレベッカ様の友人に言わなければならないなんて
「お許しください…」
けれど、言わなければ…
もうすでに、レベッカ様のことで悪い噂が流れてしまっているから。
「──ブルジェ伯爵のことにしても…っ、おふた方の関係を怪しむ声が、城の中に…」
「……え?」
レベッカの顔が青ざめる。
「二人で馬に乗って城から抜け出したという噂が出回っていまして…!」
「──…っ」
「これ以上怪しまれる事をすれば、レベッカ様がますます追いこまれます」
エマの心配は本心だった。
たとえこの忠告が、本意でないにしても──。
「──本当はわたしだって、このような事を申し上げたくはございません」
「……エマ?」
「わたしは…レベッカ様の立場があまりにも不憫(フビン)に思われてならないのです。レベッカ様はまだ若く、とても美しくて素敵な方です。なのに、なのにこの婚姻は…──!」
本音をこぼすエマの様子に、アドルフは動揺した。